Bさんが動いた。
今コロナだから。
危機管理も兼ねて、同じ部署でもメンバーを2階と3階に分けている。
我々は2階へ移動したメンバー。
言ってみれば弱者だ。
フットワークも軽く、行けって言っても文句を言わない若手(部署内では)メンバー。
自分は最初、3階に残ってた。強者だからじゃない。自分は「どちらでもない」からだ。
それでも2階へ移動になったときは、嬉しかった。
どう考えても、2階のメンバーのほうが有能だからだ。
ありがたいことに、コロナ禍で仕事が倍増した。
って言っても他部署のヘルプだけど。
これで会社が成り立ってるからヘルプせざるを得ないんだ。
2階と3階で、通常業務そっちのけで、1日の半分くらい他部署のヘルプに入ってる。
4月からずっとそうだ。
最初は2週間とか言ってた。そのうち一か月になって、最終的に「無期限ヘルプ」になった。
他部署ヘルプのかなめとして他部署出身のKさんの存在は大きかった。
なんせ他部署のヘルプだから。
一応近い部署である自分たちが真っ先にヘルプに入る必要あるってのはわかるけど、細かいことはまったくわからない。
それをKさんがサポートしてくれた。もう何か月も休みなく。
そのKさんは2階にいた。
働き者の2階メンバーは、頑張った。
Kさんが目の前で休みなく働いてるの知ってるし。
2階メンバーの年長者のBさんもかなり頑張っているのをみんな知っていたから。
だからみんな文句も言わず頑張って。
だからみんなわかってた。
2階と3階でヘルプの温度差があるってことを。
ヘルプに入ってる時間が、表面上同じでも、まったく違うっていうことを。
明らかに2階の負担が大きいっていうことを。
2階は3階が見えない。誰が何をしているのかわからない。
でも「3階から2階へ降りてきたメンバー」は、業務の報告をしあってる。それは全員が見える場所で報告しあっている。
3階にいるリーダーへ報告が必要だから。
3階は2階が見えている。
2階は透明。
3階は不透明。誰が何をしているのかわからない。
今、ヘルプに入る時間を分けている。
2階は前半、3階は後半。
今日の夕方それが起こった。
Kさんが2階のメンバーもがっつりヘルプに入ってくれと。
かなりの量だった。
おかしな量だった。
Bさんが動いた。
それは3階でできないのか。
すでに前半でもかなりの量のヘルプに入った。
人時にするとこれくらいはやっている。3階はどうなのか。
なんのために時間を分けているのかと。
決して口には出さないけれど、不公平だと宣言していた。
Kさんは謝った。
誰も悪くない。
ヘルプは仕方のないこと。
たぶんBさんが何も言わなければ、他の2階のメンバーは積極的にヘルプに入った。
それでもBさんは言わなくちゃいけなかった。
2階の対応が当たり前ではないことを。
3階の不透明さに何も感じていないわけではないことを。
Kさんはそれを言わせてはいけなかった。
ほんの気のゆるみ。
Bさんは動いたが、結局3階は不透明のままだった。
Kさんは「すでに3階の人たちにもかなりの量ヘルプに入ってもらってた」
そう言った。
でも2階はいつだってかなりの量のヘルプに入り、かなりの量の追加のヘルプに今まで入ってきた。
ヘルプの必要のない日でも、2階だけヘルプに入ることだって何度もあった。
Bさんは動いたけれど、きっと何も変わらない。
3階の人ともKさんともうまくやるだろう。
3階の不透明も変わらないだろう。
2階の負担も変わらないだろう。
それでも自分は2階に居てよかったと思う。
透明な水で過ごす方がよほど健全だからだ。